これからの距離感(ディスタンス)

ソーシャルディスタンスでもフィジカルディスタンスでもかまわないが
要はこれからの距離感は今までとは違うということ

ソーシャルディスタンス」から「フィジカルディスタンス」という言い方に改められた――社会との距離ではなく物理的な距離が正しい――とか、さして重要とも思えないこと――その言葉尻を捕らえたような批判でどれほどの実態に影響があるというのか――にああだこうだと議論している世間のようだけれども、要は「新型コロナウイルス(COVID-19)」経験後は「距離感」が変わったということで、大した意味もなく距離を詰めることや、馴れ馴れしく近づくことは、今や感覚的に鬱陶しいだけでなく、感染リスクが常在化した社会ではハラスメントに値すると言っても過言ではないだろう。

他人との距離にやや神経質な私は、以前から世間のさまざまな「距離」に言いたいことが山ほどあった。そのほとんどは「近すぎだよ」という文句だったが、ポストコロナがもたらした新たな「ディスタンス」はそんな私にとってはストレスが軽減されるものだ。咳やくしゃみといった症状がなくとも、人をステルス感染者にしてしまうウイルスの出現によって、大した意味もなく距離を詰めることや、馴れ馴れしく近づくことは、今や自粛すべきという常識になりつつある。

たとえば、かつて経験したさまざまなオフィスは、どれもイケてない「ディスタンス」だった。デスクは向かい合い隣り合い、機能していない申し訳程度のパーティション、無論、咳やくしゃみの飛沫はダイレクトに飛んでくる。唯一、各人顔の前の液晶モニターだけが遮蔽物か。アイコンタクトが必要なチームプレーのスポーツをしているわけでもない、画面に向かって粛々とタスクをこなすような仕事では、集中力の維持のためにも、私は「ソーシャルディスタンス」も「フィジカルディスタンス」も熱望していたが、各人をアイソレーション化することに、上役にあたる人物は「なんだかさびしいじゃない」という、日本人の負の気質を丸出しにしたかのような台詞を吐いてそれをゆるさなかったのを記憶している。いい年した大人が弱肉強食の企業活動においてそんな乳幼児のような感覚に呆けているから会社がダメになったのではないか。資本主義末期の仕事などというものは粗利への最短のパスを描くことと、余った時間は粗利へのより良いパスについて考えていればそれでいい。さびしさなんぞに感じ入る暇があったらせいぜい粗利について考えておれ、と私はいつもそのオープンすぎるデスクの平野の前で斜に構えていた。

ちなみにオフィスでもっとも多く見られるデスクのレイアウトは、向かい合う複数のデスクのかたまりを「長」たる者の席が監視するかのように配置されるものだが、あれほど仕事がしにくいレイアウトもないのではないか。能力は低いのに配置だけ偉そうなあのようなレイアウトも、ポストコロナの流れで廃案になればよいと思う。

とにかく、これまでの距離感は、家族でも恋人でもない、他人同士の距離にしては近すぎる傾向にあったと私は思う。「新型コロナウイルス(COVID-19)」だけではない、今後どのような未知の感染症災害に見舞われるやもしれぬ感染症災害前提社会の「新しい距離感」を今回「レイアウト」として提案してみたい。

ポストコロナのレイアウトは、
人の向き、呼気、エアフローを考える

「新型コロナウイルス(COVID-19)」で注目された人と人との距離。接触による感染と、咳やくしゃみ、呼気等による感染を避けることがねらいだ。ポストコロナのレイアウトは、基本的に 面と向かう機会を減らし、非接触と、呼気などが他者に向かわないエアフローをポイントに考えてみる。デスクワークでパソコンを使うことが基本の場合、共有の物理電話等もなくし、コミュニケーションはチャット等オンラインで行うようにすればいい。新型コロナウイルス(COVID-19)以前は、隣り合う席の人間とわざわざチャットを介して話をすることはどこか遠回りのように感じられたかもしれないが、感染症対策という観点でいえば「ご近所」ほど「ディスタンスに気を配る」時代になった、ということか。

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赤の三角は人の向き。各席を隔てるパーティションは、地面から高さ180~200センチを想定。デスクは一般的な矩形よりも弧のほうがマウス操作などしやすいかも?しれない。面積あたりの人の収容率は下がる傾向になるが、ポストコロナのレイアウトでは空間効率のみ優先した「すし詰め状態」は感染リスクが高くブラックな環境ということになる。心身に心地よい植物なども、ゆるいパーティションとして用いたい。こんなオフィスなら働きやすそうだと思える。 イメージ
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矩形だらけのオフィスより、有機的なラインが居るだけで楽しそうだ。 イメージ
こちらは本棚などのインテリアをパーティション代わりにレイアウトしたもの。棚の背面は板面であることが条件か。通路の間隔も広めにとり、エアフロー及びエアロゾルが希釈されるための空気の量をイメージ。エアフロー管理、換気のための装置は、今後必須になりそうだ。

自分で描いていて、どれも居心地は従来型よりも良さそうだと感じる。ポストコロナを「制限が増えた」というような、ネガティブに受け止めるのではなく、心地良さ、居心地の良さへの変化のきっかけとする。そういう変化やアイデアを「ポストコロナ」という新しい言葉の意味としていきたいと私は思います。

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