感染症災害前提社会|世間|ビジネスの変化

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「感染症対策済み」がデフォルト(あらかじめの条件、default)となる
感染症災害前提社会

日本にとっては、新型コロナウイルス(COVID-19)というパンデミックがなかったとしても、デフレ×増税──令和2年度の国民負担率は44%を越える見通し──で世間は満身創痍だった。すでにその状態にあった日本を感染症災害が襲ったのだから、その被害は実質、複合災害的である。地方に住んでいる私の目にも、世間の下降曲線はあきらかだったが、それがさらに急勾配になることは、もはや避けられないだろう。世間のいくつかのビジネスはさらに活力を失い、共同体は大きく揺さぶられるだろう。

新型コロナウイルス(COVID-19)がもたらす不可逆的な変化ニューノーマルへの完全な移行には時間がかかる。その過渡期にはさまざまな方面に移行圧力がかかり、ビジネスによっては廃業や縮小が不可避となり、結果、ジョブ型といわれるような労働形態はさらに拡大すると思われる。それは同時に不安定化の加速であり、多くの人が仕事に従来型の「安定と安心」を求める暇もないくらいに「生存指向」へと特化したマインドになっていくだろう。

ここで重要な観点となるのが「感染症対応型」というニューノーマルの中心的価値基準となるであろう「型」「様式」である。「感染症対策済み」がデフォルト(あらかじめの条件、default)となる「感染症災害前提社会」では、「感染症対応型」ではないビジネスは競争において生き残りにおいて、不利な位置を固定化される。すなわち、感染症に対応しているか否かは、感染症災害前提社会における新たな常識、標準となるだろう。

ニューノーマルへの移行圧力が比較的大きいのが、物理的に近接せざるをえない、空間を共有せざるをえないビジネスで、そういったビジネス、サービスにおいては大きな変化がせまられ、技術やコスト、観念において変化に対応できなければ、感染症災害前提社会に居場所がないという苛烈な局面に立たされる可能性も考えられる。満員電車や駅周辺に集中するオフィスビルといった光景も、ニューノーマルでは常識、標準という強い観念の下支えを失い、変化した需要にたいして転向をせまられることになるのではないか。感染症災害前の、インバウンドに偏った営業スタイルなどは、今回、神経質な衛生モラルを獲得した者たちからすれば、もはや悪しき営業形態と後ろ指をさされかねない。

拡大するネット次元

感染症災害ほど、ネット次元を急加速的に拡大する災害はないのではないだろうか。「リアル(現実)」の対義としての「ネット」は、それこそグローバルスタンダードであるのだから、新型コロナウイルス(COVID-19)が安全地帯としての「ネット」を急拡大させることは必定だろう。この流れは確定的であるようにみえる。

感染症災害前提社会では、ネット空間はどのように拡大、開拓されるのだろう。そのヒントは今回の新型コロナウイルス(COVID-19)によって制限されたものを俯瞰すれば見えてくる。そのひとつは、新型コロナウイルス(COVID-19)によってメディアで連呼された「不要不急」ではない「要急」の事柄の移転である。不要不急の外出をひかえることはできても、重要で急ぐことはひかえることができない。だから感染症災害中も満員電車は走り、オフィスに人は集まった。しかしこれらの「しようがない」という理由は、感染症災害前提社会ではいつまでも通らない。それらを「感染症対応型」へとシフトせざるをえなくなっていくのだ。

空気あるところ、人あるところ、すなわち「リアル」にはウイルスの脅威は常に存在し、永遠に安全地帯になりえないのであれば、「ネット」というシェルターを移転先として選ばざるをえない。無論、ネット次元には「コンピューターウイルス」の脅威が存在するものの、直接的に健康や生命にふりかかる脅威ではないし、移転、負荷分散先としてのコストも軽いため、当面、シェルターとしての意味が強く意識されることだろう。真空の聖域、ネット次元は「要急」の事柄を実験的、試験的に代替しはじめ、漸進的、不可逆的に移転し、そしてそれらをリアルへ返すことはないだろう。

ネット空間の拡大、開拓は、コミュニケーションの必要性も後押しするだろう。ウイルスの脅威ゼロのネットでは、今回の感染症災害後、ビジネスからプライベートまで、コミュニケーションの場としての役割を現実からごっそりもっていくのではないか。それにともない、5G、6Gといった能力の拡張も推進力を増すかもしれない。そうなれば当然、新たなサービス、UI(ユーザーインターフェース、User Interface)やUX(ユーザーエクスペリエンス、User Experience)等の開発競争も加速し、「ポストコロナ」のネットのソリューションは新たなブルーオーシャンとなり、勃興する企業も現れるかもしれない。IoT(Internet of Things)の流れは新型コロナウイルス(COVID-19)によって加速したと数年後振り返ることになるのではないだろうか。

ここでもうひとつ忘れてはならないのが、「ロボティクス」についてだ。社会の恒常性維持の基底となる各種インフラ、水道や電力網といった公共・公益的な施設を管理する人間が、感染症によって稼働できなくなってしまうことは充分考えられる。感染症災害前提社会では、そうしたインフラが完全にシャットダウンしてしまわないよう、「ロボティクス」によって無人操業可能な状態を担保しておく必要があるだろう。

「次世代通信網」とそれに合わせた「UI、UX」、「ロボティクス」といったテクノロジー関連は、感染症災害前提社会の花形産業となるのかもしれない。